中村恭平選手の実績
プロに入ってからやることがたくさんある投手だが、素質としては魅力たっぷりの選手。このような左腕投手を育てるのは難しいため、できれば育てた実績のある、長期的に見ることができるチームに入団してほしい。
岩手日報の記事
http://www.iwate-np.co.jp/sports/2010sports/m10/spo1010261.html
富士大の本格派左腕中村恭平(4年)は心静かに運命のドラフトを待つ。28日に行われるプロ野球新人選手選択会議だ。3年春の全日本大学選手権で149キロをマークして一躍脚光を浴び、今年春のリーグ戦後に社会人の名門トヨタ自動車に内定。トヨタとは「ドラフト2位以上ならプロ。3位以下なら社会人」の約束だった。中村は「何位指名でもプロに行きたいが…。上位でなければ、トヨタで鍛え直してプロを目指す」と複雑な心境を語った。
逸材ゆえの悩みか。プロ行きの条件はドラフト指名ではなく、2位以内の「狭き門」だ。斎藤佑樹(早大)ら大学生投手が豊作の年だけに厳しい。それほどトヨタ側も手放したくない証拠だ。最速153キロ左腕は「(指名があっても)4、5位あたりでしょう。半ばあきらめた時期もあったが、悩んでも仕方ないですから」とあっけらかんと笑い飛ばした。
186センチの長身から投げ下ろす快速球が魅力だ。立正大淞南高(島根)では変化球主体の軟投派だったが、富士大で才能が開花。高1で158センチだった身長が3年間で180センチに。体の成長が投球スタイルにも変化をもたらした。
130キロ台だった直球が大学入学後、いきなり141キロをマーク。一方、背が伸びた影響でリリースポイントが狂い、変化球の制球は定まらなくなった。「試合では変化球が怖くて投げられない。だから球威で勝負。タイプが全然違う『本格派』になるしかなかった」と明かす。
50メートル走は高校時代の約8秒から6秒00に、100メートルの遠投も120メートルに進化。「球速も勝手に上がった」と自ら驚く。大学でも身長は伸び続け186センチに達した。
球速149キロで鮮烈な全国デビューを飾った昨年の大学選手権準々決勝も変化球なしの真っ向勝負。中村は「50球のうち直球が48球で、残り2球はスライダーがすっぽ抜けた」と語る。捕手とのサインは「直球」と「首を振る」の二つだけ。「直球ばかりだと相手に狙われるから、時々首を振れって指示が出た。全国大会なのに草野球みたいで…本当にこれでいいのかなって思っていた」と苦笑いする。
荒れ球もお構いなし。未完成ながら快速球で打者の内角をえぐる左腕は、可能性を秘めた原石だ。荒削りだからこそ面白い。青木久典監督は「大学であと1年できれば、もっと伸びた投手だ。プロでもトヨタでも、どっちに進んでも彼にはベストの選択になる。まだまだこれからの投手ですよ」とさらなる飛躍に期待を込めた。